看護師 看護観

私の考える看護観 〜ターミナル期の患者様から学んだ看護〜 

私の考える看護観について事例を通して述べたいと思います。
この看護観は、500人以上の看護師の看護観の中から、トップに選んでいただいたものです。

 

事例)50歳代の女性、膵頭部癌ターミナル期にて疼痛コントロールしている患者(以下A氏とします)。
A氏は、自身の疾患を受け入れることができず、「なんで私なの。どうして。」
と毎日涙され人との関わりを避けていました。

 

ターミナル期の患者の心理面は、一人ひとり違い、とても変化しやすく複雑であり、軽はずみな言葉は禁物です。
私は、夜間巡診時A氏の部屋を訪室すると、A氏は天井を見上げていました。

 

私は思わず「大丈夫ですか。」と尋ねました。
すると急にA氏は泣き出し「大丈夫って何?大丈夫なわけないでしょ。こんなん私じゃない。」
と怒り口調で涙されながら話されました。

 

私は、言葉に詰まり、そっと背中をさすりながら、私の言葉がA氏を傷つけてしまった、
またどう対応すればよいのか悩みました。   

 

A氏の心理面として、キューブラー・ロスの心理過程を参考に分析すると、
A氏の言動から否認、怒り、抑うつの段階であることがわかりました。

 

ターミナル期の患者の心理は「否認・怒り・取り引き・抑うつ・受容」
この五段階を行き来したり、重なり合ったりと個人差もあり複雑です。
その場その場の患者の気持ちをくみ取って、
思いやりをもち、寄り添える看護をしていかなければなりません。

 

ターミナル期・死期は、患者や家族にとって貴重な時間であり、
死への受容に対し、「思いやりの看護」また「悲しみを表出しやすい環境づくり」を提供し、
そして私たちはそんな貴重な時間を看護させてもらっているという気持ちを忘れず関わっていきたいです。

 

広辞苑で「思いやり」を引くと相手の立場や気持ちを理解しようとする心と記載されていました。
私は看護師としてケアを行う中で、患者の立場に立ち、安楽な体位の工夫、
口腔ケアなど個別性をもった身の回りのケアを行うことで思いやりの看護を実践していきたいです。

 

そのためには、常にアンテナを張って患者の痛みの変化などの全身状態、
また不安、孤独感、苛立ちなどの精神状態に対し少しの変化でも気づけるよう関わっていかなければなりません。

 

看護の状況は、ボイキンとシュンホファーによって、
「分かちあわれた生きた体験で、その体験の中で、
看護婦と看護される人の間でのケアリングが人間性を高める」
と定義されています。
看護師として、患者との日々の関わりやケアの中で、自己の気づきを高め、
また患者への影響を考え、自己を成長させていきたいです。

 

私の病棟では、癌性疼痛を訴えられているターミナル期の患者も多く、
疼痛のコントロールはとても重要です。
疼痛の訴えを身体的疼痛としてだけで捉えるのではなく、
その身体的疼痛を増強させている要素を
精神的、社会的、スピリチュアルの観点からみていく必要があります。

 

患者に対し、トータルペインをもつ一人の人間としてとらえ、
薬剤だけで対処するのではなく、多方面からアプローチし、
少しでも身体的疼痛の軽減できるよう患者のそばに寄り添い、
思いやりを持って関わっていきたいです。

 

最後に私が考える看護とは、患者に対する「思いやりのある看護」です。
そして、どのような患者に対しても、その人らしい生を全うできるよう、
患者とのコミュニケーションを大切にし、アセスメントし個別性をもった援助をしていきたいです。

 

これからさまざまな人の生死に関わっていくにあたり、現実から目をそらさず、
一日一日を大切に、ひとりでも多くの人が安らげる時間を過ごせるよう関わっていきたいと思います。
また亡くなられた患者や家族の方々の悲しみを無駄にしないように日々振りかえり、
自分の看護観を成長させていきたいです。

 

 

参考文献
1)ジュリア・B・ジョージ:看護理論集,日本看護協会出版社,2005
2)消化器外科ナーシング、がん性疼痛ケア、2005
3)柏木哲夫、藤原明子:系統看護学講座 別巻10,ターミナルケア,2005

 

 


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