SBAR教育について
今回は、SBARを使用した新人教育をしてみました。
まずSBARとは、簡単にいえば「分かりやすく相手に伝える手法」のことです。
日々、看護を行う中で、医師、科長、リーダー、メンバーへ報告することが日常的にあります。
しかし、報告の方法によっては相手に上手く伝わらず、対処が遅れたり、インシデントも起こりかねません。
そして、自分自身の中でジレンマを感じてしまうこともあるでしょう。
より相手に必要なことが的確につたわる手法を習得できる手法です。
そして、コミュニケーションにおける医療安全対策として関与した方法です。
「SBAR」の由来:
この手法は、アメリカのワシントンDC州にある、プロビデンス病院の看護師の教育方法として用いられている「SBAR」という手法です。
「SBAR」は、医療安全対策として多職種が長年の研究結果をもとに作成した「Team Tepps」というプログラムの中の一つです。
「SBAR」の構成:
1)報告する前にという準備段階があります。
2)状況 Situation(S)
3)背景 Background(B)
4)アセスメント Assessment(A)
5)提案 Recommendation(R)
実際に、例題で何度か練習し、SBARを習得してもらおうと思い事例をいくつか作成したので、SBARを習得されようとされている方は、参考にしてみてください。
新人教育〜SBAR第1回目〜
事例1)82歳 男性 脳梗塞 右麻痺 認知症あり
T36.2℃ P102回/分 BP140/70mmHg R21回/分 JCST−3
一人で車椅子へ移乗時にベッドサイドで転倒
患者「一人でできる思ってん」
外傷なし 疼痛訴えあり 右側から転倒し右肩・右大腿部打撲
SLR良好 左離握手可能
○場面 先輩看護師への報告
@一度、先輩看護師へ報告してみよう。
ASBARシートへ一緒に記入してみよう。
最初に | |
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S(状況) | |
B(背景) | |
A(判断) | |
R(提案) |
〜SBAR第2回目〜
事例2)76歳 女性 誤嚥性肺炎 脱水
T38.0℃ P120回/分 BP88/52mmHg R24回/分 JCST−3
酸素マスク3L spo2 92% 黄白色粘調痰多量 WBC12800.CRP12.5.Hb8.5.
○場面 リーダーへの報告
SBARシートへ一緒に記入してみよう。
最初に | |
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S(状況) | |
B(背景) | |
A(判断) | |
R(提案) |
〜SBAR第3回目〜
自分で事例作成し、SBARへ記入してみよう
事例3)
最初に | |
---|---|
S(状況) | |
B(背景) | |
A(判断) | |
R(提案) |
SBAR 解答例
新人教育〜SBAR第1回目〜
事例1)
最初に | 413号室の山本さんが転倒しました |
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S(状況) |
トイレに行こうとして車椅子に移乗時に転倒した様です |
B(背景) |
82歳 脳梗塞 右麻痺 ADL車椅子 |
A(判断) |
特に外傷なく、レベルも変わりないが、患者「痛い」と訴えあり |
R(提案) |
経過観察で良いのか指示が欲しい |
事例2)
最初に | 403号室に誤嚥性肺炎と脱水で入院になった山本さんなんですけど、相談です |
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S(状況) |
両肺ラ音あり 自己排痰不可 酸素3L spo2 92% |
B(背景) |
自宅で二日前に食事中にむせあり、その後、発熱あり食事摂取不可 |
A(判断) |
酸素・吸入指示が欲しい |
R(提案) | 吸入・吸引・酸素指示の依頼 |
新人指導SBARの評価
事例)70歳 男性 急性期脳梗塞 右麻痺 医師からの安静度指示:車椅子まで
17時00分 BT36.2℃ P102回/分 BP130/70mmHg R21回/分
JCST−3
18時00分 食事のため看護師にて中等度介助にて車椅子へ移乗 ナースコールを手元に置き、「移るときはナースコールを押してくださいね」と声をかけ離れる。
18時30分 一人でベッドへ移乗時にベッドサイドで転倒 同室者がナースコールにて教えてくれた 右側を下にし転倒している
患者「一人で移れると思ってん」
外傷なし 疼痛訴えあり 右側から転倒し右肩・右大腿部打撲(発赤なし)下肢痺れなし
BT36.5℃ P120回/分 BP150/80mmhg RR25回 SLR良好 左離握手可能
★リーダー看護師へ状況報告してみよう
評価ポイント
・なにがいけなかったかということを考える前に、状況、これから予測される状態変化を簡潔に的確に報告できるかどうか。
・急性期脳梗塞ということから、ナースコールの説明を理解できるかどうかわからないということを振り返れるか。
・頭部打撃があったかどうか不明であるため、可能性を考え医師に診察・検査の指示を仰げるかどうか。
事例2)76歳 女性 誤嚥性肺炎 脱水 ADL全介助、意思疎通可
なんども誤嚥性肺炎を繰り返し入院している。食事は3か月前の前回退院時にST評価にて嚥下刻み食となっており、施設でもその形態で続行して出していた。施設職員にて座位をとり全介助にて摂取していた。時々むせ込みありと情報あり。
この患者の入院受けをした。
20時00分入院時BT38.0℃(発熱時指示:38℃以上でボルタレン座薬25r使用) P120回/分 BP88/52mmHg(血圧低下時指示:昇圧剤なし) R30回/分 JCSU-30
酸素マスク5L spo2 90%(酸素指示:90%以下で1Lずつ増量MAX10Lまで) 黄白色粘調痰多量 WBC 12800.CRP 18.5
.Hb8.5. 血ガス→O2 68 CO2 50
★夜勤リーダーへ状況報告
評価のポイント
・発熱はあるが血圧が低い。血圧が低い患者に対しNSADISを使用してよいか判断できるかどうか。
・酸素飽和度は低く、指示簿に沿うと酸素量は増量できるが、血液の二酸化炭素濃度が高いためCO2ナルコーシスを引き起こす可能性、または引き起こしている可能性をアセスメントでき、酸素増量を迷い相談できるかどうか。
・CRPも高値で年齢や他データより、急変の可能性を予測しモニター装着をしたほうがよいと報告できるかどうか
・食事形態や摂取方法に問題があることをアセスメントし、相談できるか。ただし入院時に相談するべきことか判断できているかどうか。
SBAR指導計画書
テーマ;SBARについて新人看護師に指導する
対象:新人看護師
目的 SBARを理解し、実践に繋げることができる
目標 ・相手が理解しやすいように情報全体を簡潔明瞭に適切なタイミングで伝えることができる
・自分の報告の改善点を見出すことができる
時間 | 内容 | 方法 | 担当者 |
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1日目
10分
2日目 |
@現在の対象一年目の報告方法・特徴を確認
ASBARについて説明
BSBAR理解度確認
引き続き指導していく。
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・事例1を提示
・一年目看護師から先輩看護師へ、事例1について状況報告をしてもらう
・資料(5年目研修で使用したもの)を用いて説明
・副主任へSBARについて説明
・一年目看護師から申し送り、報告を受ける際SBARに沿って状況を分かりやすく伝えることができているか評価してもらう(チェック項目に沿って)
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卒5年 看護師 |